激辛料理入門〜おいしい辛さは下味から
美少女小説家のトントロです。
嘘です。
唐突に自分語りから始めるわけなのですが、
我が家は辛いもの好きの一族なのです。
ボクの実家はありふれた中流家族なのですが、
両親の意思疎通が全くできないことで有名です。
とくに父の頑固っぷりは常軌を逸脱しておりまして……
その異常っぷりのひとつとして「激辛信仰」が挙げられます。
父は食べるものが辛くないと気が済まない人間なのです。
食べ物によく七味をかけます。
餃子にも、味噌汁にも、ロールキャベツにも、シチューにも基本七味です。
味覚がおかしいんです。
その異常っぷりを感じ取っていたのは、他でもない母でした。
はじめに言っておきますが、母はバカです。理解能力が皆無です。一族の中ではそれが愛すべき存在だそうなのですが、ボクには理解できないくらい理解力が乏しい人間です。
その母はあまり料理が得意ではありません。
料理が得意ではない、というのはやや語弊があるかもしれませんが、少なくとも味付けの才能はありません。
しかしながら、自分の作った料理に対するプライドは人よりも高いです。
なので、父親が七味をかけると激怒します。
「味わってからかけろ」と。
しかし父はこう反論します。
「味がしないからかけてるだけだ」
だいたいこれで夫婦喧嘩が始まります。それはさておき。
このやりとりを毎週やっているので、さすがの母も学習しました。変な方向に。
どういう方向かというと、料理のベース(油、ダシとか)に辛みを入れる、という方向性です。いや、味がないならその方向性は風味消すだけだろ……と思うのだが、彼女にとってはそれが最適解らしいので。
結果として我が家のありとあらゆるものは辛く仕上がります。
おでんには鷹の爪が入り、シチューにはハラペーニョが入り、餃子の具はなぜか赤い。
しかしそこは我が家、父が味見もせずに七味をかける。母は怒り、唐辛子を見境なく投入する。(ちなみに七味はボクが買ってきた舞妓はんひぃひぃだったりする)
以下、無限ループの繰り返しにより、我が家の食卓は常に唐辛子で彩られるようになりました。
そんな食卓に慣れきったボクは辛いものエリートとして世に放たれたのでありました……
本題です。激辛料理を作りたい時は、とにかくベースの辛みを際立たせること。これだけで辛さの印象が変わります。
油を炒めるときに鷹の爪(これは某とちまる生徒会長に教わった技術)を輪切りにして入れるとか、油の三分の一をラー油にするとか、それくらいで劇的に辛みが加わります。
あと、一味を使うのを惜しまないこと。一味を入れると唐辛子の風味が強く出るので、味に深みが増します。
……誰がやるかよバーカ。